昆虫と私/三条麗菜
 
幼い頃より私は
自分が昆虫の一族であると
思ってきました

色香だとか
瑞々しさだとか
まばゆさだとか
そんなものには縁がなく
私のからだは
金属のように硬く
乾燥しているのです

何より私は
砕かれる存在でした
昆虫にもやわらかい内蔵があり
食べたものはやわやわと消化され
とろとろの糞となって出ていきますが
それらを守るのは
キチン質と呼ばれる硬く薄い
殻だけなのです
それはやさしい指の中でも
壊れる

ぐしゃっ
ぐしゃっ
ぐしゃっ


夏のとある日に
幾千の木の葉が
風にこすれ合う音を
愛しています

昆虫という生き物は

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