寝言は役に立たなかった。/真島正人
実質上、家族以外で最後にしゃべったのは僕だろう……。
※
僕も誰も、Iさんが死んでしまうなんて思っていなかった。
僕はむしろ、バーにいる間中、ガンなのにウィスキーを飲んでいるNさんの方の心配をしていて、体調が悪いといって帰ったIさんの心配はしていなかった。
※
それにしても本当に、最後にバーから出てドアの前でIさんに問いかけた「大丈夫ですか?」という言葉が、寝言になってしまった。
そんな言葉、まったく意味が無かったのだ。
「大丈夫ですか?」と問いかけて、
「大丈夫。ありがとう」
と返されて、安心してバーに戻って、また飲んでしまっていた。
そんな返答に安心せずに、
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