乱視/手乗川文鳥
 


家の中で一番大きな窓に身体が映る
わたしの本当に美しい姿は
ピアニストになり損ねた青年の指にゆっくりと裂かれるとき
離れていく右半身と左半身が完全に分離する寸前に
皮膚が結露に触れて濡れた部分が汚いと感じる
わたしは窓枠について考える
刺してやりたいな、ひと思いに
その感触がいつまでも手に残って、思い出す度にぐったりとなる気持ちを、わたしはあわあわの卵にして家中に産みつける、どこもかしこも、あわあわ。



わたしたちは手を繋いで動物園へ行かなかった
晴れた平日に家を出てそのまま電車に乗らなかった
わたしたちの自主性はわたしたちを都市から遠ざけた
わたしたちの足
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