冬椿/Giton
 
  .
地に灼(いちしろ)き椿は燃える
雨に打たれても猶お灼く
雪にうずもれて猶お灼く
涸れ枯れの遼原に椿燃ゆれば
  .
吹きしきる睦月の霙(みぞれ)に逐(お)われ避りつつ
羽虫らは眛爽の涯(きし)に惑い来る
汝(な)が青緑の厚き盾を恋い慕い
灼き蓋(おお)いの下に羽息(やす)めたり
  .
されど疾風は猶お止まず
黄金(きん)な頭(こうべ)に群れるすがるの
甘い耀きに酔う遠い蜜の夢
  .
日は陰り霰撃つ天の腸(はらわた)薄明に紛れ
密やかな天使の吐息が舞い降りるとき
紅蓮の椿遼原に燃えていや灼く
  .

戻る   Point(4)