あったそこにあった/あおば
 
                 110108



乗っていったオート三輪車は実在していた
探しに行くなら今だ
悟りの足りない賢者が叫ぶ!
ひらひらと雪が舞い散る前に
腹ごしらえしておくのは常識だ
マニュアルには書いてないぞ! と怒るのは止めてください
公私の区別が付かないあなたは
本質的に不適応ですと
粉雪は冷ややかな眼をこちらに向ける

三輪車のエンジンをかけ損なった強者たちが
貧相な男に助けを乞う
男は身体ごとペダルに預け
こそっとエンジンを掛けた
バタバタいう音に
6気筒の新車が異を唱えるのも知らん顔
バタコバタコと村を出て行くオート三輪車
見送るのは貧相な男たち
強者たちは吹きさらしの荷台に坐り
どこ吹く風と粉雪を手で振り払う
白々とした朝には轍の跡が消えていて
狼藉の痕跡も残らないが
ハムエッグの好い匂いにつられ
トーストを囓りながら
僕たちは外を見ている






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、るさん。



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