おせち/salco
の口には巨大だった。その父のおむすびがまた百年の仇で
も三角にしたように堅かったのを思い出す。母の作る料理は総じて(イ
ンスタントラーメンを含め)不味く、父のは大きさ以外は何でもまとも
で上手だった。
小国民の反動で、終戦後はグレて組に入りかけ親分さんに説諭された
と自慢するアナーキーな父であり、凡大中退後に就職した某某公社をレ
ッドパージでクビになったと吹聴していたラディカルな男でもあり、理
屈に細かい日本共産党にも除名された頭の悪い人間ではあったが、友人
と商売に手を出して失敗したコロッケ屋というのは本当らしく、揚げ油
の温度を間違えてよく破裂させたという回想は実に哀切で説得力があっ
た。
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