結氷/Giton
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触れられればさらさらと崩折れる
砂岩の膚(はだ)に打ち込まれた鉄塔の高み
風が渡ってゆく 空は日を隠し 固まった沼地
に木々の揺らぐ姿が曖昧に凍結している
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一切の動きを忘れたかのように
凝固した水の面(おも)錆びたプレートの注意書
警告を無視して踏み込んで来る人を捕らえては
杜の奥に迷わせる亡魂の棲処(すみか)
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沼地の白い目はきのうを語ろうとはしないから
ただびゅうと吹きすぎるこんな風の強い日には
足下の薄氷から悪寒が這い上がって来る
感慨になど浸っていたら命が危ないんだ
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目をぱちくりさせてそこにいるのは十年前
の俺だすべてを冗談のようにはぐらかしてしまう
そのいたずらっぽい瞼の奥で まんまるい瞳
が親しみと軽蔑に満ちた光を宿している
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世の中のすべてを疑い否定する
そして一切を茶番にしてしまう
きみの凍りついた快活な魂
もういい加減にしないとこの場所は寒いぞ
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