箱根駅伝 /服部 剛
先頭の、早稲田のランナーが
歯を喰いしばって近づいたので
歩道で妻と旗ふる僕は
「わせだぁ〜・・・!」と、叫ぶ。
二番手の、東洋大のランナーが
汗を滲ませ走っていたので
歩道で妻と旗ふる僕は
「とうよう〜・・・!」と、叫ぶ。
三番手の、駒沢大のランナーが
あきらめない瞳に炎を燃やしているので
僕はいてもたってもいられずに
おもむろにコートを脱いで
「りえこ・・・これを持ってておくれ」と言い残し
遠のくランナーの背中を追いかけて
歩道をいきなり、走り出す。
自らの恥ずかしさを振り切るように、走る僕を
「あ、走ってる」と
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