完璧な蝶/天野茂典
 
歳まで生きた。
   シャガールは詩を書いた。
   つまらなかった。
   絵は自在で奔放だった。
   本物の温もりだった。


   好き嫌いは別にして本物に出会うのはきもちがいい。
   赤もきいろも蛍のように発光していた。
   猛獣と裸婦とピエロとポエムとサーカス。
   浮いていた。
   浮遊していた。
   祖国のない魂のように完璧だった。


   アイデンティティが欲しいのだ。
   人間は所属する生命体だ。
   シャガールにはそれがなかった。
   藻のように風船のようにゆらゆら揺れて浮いていたのだ。
   シャガールが愛されるわけを
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