ベンチ/花キリン
空は青く澄み切っていた。叱られて泣いた。
そして涙に色があることを知った。
甘酸っぱいというのは嘘だ。
貧相の旅人のように生活をぐるぐると回っていた。
遠近法を駆使してみても、古着の記憶だけでは近づくことが出来なかった。
泣いた先はもう遠い過去なのだ。
風が大木の茂みを揺さぶっていく。
ベンチなどが置かれているが、どこに座ればいいのか。
安らぎは真ん中にあるとは限らないから迷ってしまう。
午後の時間まで自由だから長いおしゃべりが嬉しい。
古木の軋みが心の袖を通して醸成してくる。
風が正座している辺りから、次から次へと郷愁が生まれてくる。
そこに一握りの懐かしさを置くと長い影になる。
今日の空も青く澄み切っている。顔がほころんでくる。我儘な青さだ。
そこにベンチがあって何とも不思議な触感だ。
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