大宰府にて/soft_machine
 
もらった写真の一枚にあったから。堂々の構えです。母親はずんずんと境内を奥へ進んで行きます。
 靴を並べて母親が、「もうこの千円は雨漏りがすごいと。」そう言って笑いながら、すっかり濡れた靴下を見せてくれました。上がりで足跡が濡れています。母親に新しい靴を買ってあげたいけれど、それをすると、母親が、再婚相手の吝い旦那に、必ず嫌味を言われるだろうから出来ません。
 飾らない風でも意匠の凝った造りの柱は古く、しっかりとした床板は清潔で…でもなんて冷たい床なんだ!
 母親が連れてきた理由は、時期には大勢の人を集める庭園、大小三十本余りの紅葉です。苔むした岩、石庭に雨が降る様は正座していても、時が経つの
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