クリームパン/……とある蛙
 
武蔵野を行く快速電車
僕の正面のシートに
座る柔らかな君
君が頬ばる、クリームパンの
甘い香りに誘われて
僕の視線は君の口元に
紅をひいた唇に囲まれ
齧られ押し出され
唇の横にへばり付いた
クリームの小さな固まり
それを君は舌を出して
ペロリと嘗めた

じっと見つめる視線の先
君の長い栗色の髪の背後
快速電車の車窓には武蔵野の
雑木林の丘が夕陽に照り
茜色射す
裸の枝の透間より
絡み合った軟体動物の
針のような影
駅前の商店街を一瞬
垣間見た後
白く細い指を嘗め
君は携帯に視線を降ろす。
そして、今日の日に微笑んだ

Merry Christmas
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