灰色の隙間/小林 柳
 
知らない場所へ行こうと
冬の海への切符を買った

隣の席は空いたままだ
いるはずのない君を思う


病気は今も治らない
相変わらず普通にしてる

でも痺れている指先が
なぜか痛むような気がする

別れるとき振り返らないのも
自然には出来ないでいる

だから驚いて少し笑った
ふと失くし物を見つけたように

また乾いた唇が切れて
素っ気ない血の味がした


氷のように冷たい風
吹かれて肌は震える

分厚いコートの奥で
縮んで寒さから身を隠す

ひとりひとり それぞれの冬だ


つまらない灰色の空に
深い呼吸が遠ざかる

静けさに沈んで
足跡があちこちに増える

マフラーが風になびいて
くすんだ波が寄せて

砂にそっと並んだ
二つの悲しい小石

触れ合わないその隙間が
君と僕の形だ



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