コールドスリープ/阿ト理恵
 
「いくら渡せば
その雪を私にくれますか。」
《雪だるま》という題で、はじまる詩。溶けてなくなるはかない美しさに値段はつけられない。詩人は、「だから、全財産を持っていってくれても構わない、その雪を私にくれないか。誰かのために、雪だるまを作る覚悟でかき集めたその雪を、全部、私に。」わたしは、この詩に出逢ってしまった…雪の結晶は宇宙からの手紙であり、ひとつとして同じ結晶などない…が、みた目は同じ白い雪…その雪を固めた雪だるま…詩人がほしいのは、この世にひとつしかない雪だるまなのだろう…完璧な…無垢であるけれど、いろんな想いを抱えて雪になって降りてきたものたちを集めつくる本来愛くるしい雪だるまが、詩人のフィルターを透ると、単なる雪だるまではない、とてつもない哲学が含むものに感じられた。
全財産を費やしたとしても、やがて、雪はとけて水になり、地球の奥に染み込む。しかしながら、なくならない…循環するのだ永遠に…。つづいてゆくのだ。

以上、《コールドスリープ》小川三郎氏の詩集を読んだPetit感想。


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