ずっと帰る家を探していた/明楽
 
ある時は見知らぬ土地で
はっ と我に返り
目覚めた帰巣本能がこころを
身体を突き動かし
帰らなくては
家に帰らなくては
その一念で歩みを進めた

またある時はごく親しい町で
突然 道を見失い
焦燥に炙られたこころが
身体の自由を奪い
帰りたい
家に帰りたい
その一念で身もだえしていた

数え上げれば切りがない
それらは全て夢だ
夜に包まれた眠りの中で
まぶたの裏側に投影された夢だった
困らない家はあったのに
規則的な家族もいたのに
幼い頃からずっと探し続けていた
こころと身体が安息できる家を
わたし


婚姻の契りを結び
血を分けた家族が増えた今
以前とは比べ物にならないほど
心身共にくたくたになる毎日
だけど

もう帰る夢は見ない
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