半旗/生田
 
ものとの狭間を背泳ぎで抜けていくように、
――使いまわしていくと甘く感じてきて、味覚も脳みそなのだと思う。
 けれども、感覚とは脳に騙されている。し、脳を騙している。脳とはそういうもので、そう騙されてしまったから、行き止まる。魂とかを信じる人の気持ちを身近に感じて風邪のひとつも引きたくなる。おっしホンコンA型げっつーみたいにマージャンのハイをツモる感じで良い。全く別のことを考えようじゃないか。

 MMOと呼ばれるオンラインゲームの世界で、例えば彼らは半旗を持たないし、弔う術も持たない。キャラクターが死んでもプレイヤーは存在するから、である。データをロストするか、引退するかが世界から去る術であり消える術であるから、死という概念はゲームの世界と直接には繋がらない。間接的に繋がるのは「居た」という記憶であり、そして、その記憶を弔うために関係のない話、どうでもいい話をするんだ。次に誰かがいなくなって、そのたびに自分は最後まで、と世界の終わりを待つ。眠りにつける日を待っている。
 先に眠っちまった奴の事なんか、忘れちまおう、にも。てな感じにね。
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