金木犀と綿が舞うような/01
便箋――例えば花柄の便箋だとか――に手紙を書く姿は、想像できなかった。それが無地の便箋だとしても、彼のイメージに合わない。ルーズリーフの切れ端が一番似合う。そもそも、彼が手紙を書くなんて考えられないけれど、実際、彼からの手紙はこの手の中にある。
二つ折りにされたそれを開くと、文字は、ルーズリーフの切れ端ではなく、花柄の便箋の中に並んでいた。僕は驚いて、しばらくそれを凝視する。花の中から浮かび上がる達筆な形をした言葉たち。文字は書いている人の性格を表すというのは迷信なのかもしれない。
しかし、その文字は、彼の母が書いたものだった。
僕はそれを、時間をかけて読んだ。一文字一文字を、穴が空き
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