夢中無/遠藤杏
 
はどこ?
アスファルトにあなたの靴がめり込む
わたしは必死にへばりついて探した タクシーに乗って家に帰ろう
一瞬世界が真っ黒になった フラッシュバックする光景を目の前にわたしは立ち往生する
嘘みたいに真っ青に塗られた大きいゴミ箱をあなたが蹴り倒す
前傾姿勢になって一心不乱に
寂しい目をした野菜がアスファルトの上に転がると あなたは満足げににやついてさらに黒いポリ袋を中から引っ張り出して わたしの上に投げつけた
タクシーを呼ばなければ
タクシー
タクシー

終電を伝えるアナウンスが遠くから聞こえる
もう間に合わないだろう
それに体が腐乱した死体のように鼻に刺さる臭いを漂わせ
[次のページ]
戻る   Point(3)