白壁の万華鏡/光井 新
 
とか掌とか命に別状無い所ね、それで血が出たら、お互いなんかそわそわしちゃって、多分僕もなんだけど、向こうの黒目がぷるぷる震え出して、見てらんなくって、僕の方が、売ってくださいってお金渡して、気まずいまま売買成立するみたいな感じなのよ、いつも。怖いでしょ。
 でもね、怖い思いして買いに行ってでも、薬が無きゃ僕生きていけないの。中毒じゃないのよ、周りには薬中だっていう目で見られてるけど、自分の事は自分が一番よくわかってるし、うん、弱虫だって事もちゃんとわかってるし、ね。精神安定剤として薬が無きゃ、僕、死んじゃいそうなのよ。悪い人間や悪ぶってる人間が集まって作ってる小さな社会でさえ、僕は適応できなくて
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