レンブラントの絵 ー両手を開いた父親ー /服部 剛
日々の戦という
共同の幻想に塗(まみ)れ
周囲の人の口から放つ
言葉の槍に思わず むっ としてしまう
そんな意地悪さんや、身勝手さん達さえも
原子爆弾の投下された、あの
世界の姿が剥ぎ取られ、地獄絵となる
恐ろしい光よりも、遥かに
天の思いを託され
つめこんだ地上の一点に
あの日、産み落とされた
天使の微笑だった秘密を・・・
柔らかく両腕を広げる絵のような
まぼろしの父親は
風の声で
この耳元に、囁いた
(いつか、それぞれの荷を負う全ての人は
レンブラントの絵画に吸い込まれ
両腕を広げて待つ父親の胸に、抱(いだ)かれるだろう・・・)
自らの両腕を
頑なに組むことしかできない僕は
明日
みつけられるだろうか・・・?
こちらに罵声を浴びせる人の
瞳のずっと奥に隠れ
こちらに小さく開かれている、あの
透き通った両腕を
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