産む/北野つづみ
空になった子宮は
痛みをともないながら
少しずつ
小さくなっていったけれど
物語はまだ
そこに残っている
気配がした
だれもが
語りたい と
思っていた
産むという行いは
どれも似ていて
どれもなにかが
決定的に違ったから
太陽のした
大きな声で
おおぜいの人に
語っても 良かった
そうしたら
よのなかは
どんなにかへいわになる
ことだろう
けれど
波が砕けて
引いていったあとの砂浜
みたいに
産み終えた人は
ただ幸せそうに
微笑んでいるだけだった
眩しすぎて
閉じてしまった
まぶたの内側に
光が あるように
産み終えた人の
閉じたくちびるの向こう
いまも悠然と
佇んでいるもの
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