This Love Is Not Wrong/捨て彦
 

海の上をゆっくり進む船を見ていると、ボカっと頭を蹴られた。なんで?って聞くと顔がムカつくからと言われた。
陽子さんが来いって言ったんじゃないか、と言うと(実は言ってからとても後悔したのだけど)、陽子さんは自分の鞄から筆箱を取り出して、僕の腕にえんぴつを思いっきり突き刺した。ものすごく痛くて泣きそうになった。声も出せずにもだえていると、キモいんだよ、と言って後頭部をまた蹴られた。でも僕は知っている。あの鋭い何本ものえんぴつは、僕を刺すためのものだと。そして、それらはえんぴつ削りを使うことなくすべて陽子さんが丁寧にナイフで削っているということを僕は知っている。
「ナイフある?」
と蹴られた後
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