ギイ・ド・M師に/Giton
 
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まあるい風船を同じ容積の四角い
函に押し込めそうして密封した
函をたくさん重ね隙間無く積み
重い閂を掛けた建物が目路の限り
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立ち並ぶ未明の波止場キリコの
少女もそこにはいない広い広い空
花火の音が遠くで虚しく響いてもよい
陽気な三色旗二日酔いの祝日:
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倉庫の風船は夢を見ないだろうか?
役割をあてがわれた風船:函に詰まって
長い長い時間をやがて萎れてしまう
までの年月をじっと待っている心たち
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夢を見ないだろうか星のない虚無
へ暗黒の空へ高く高く浮き上がり
消えて行く夢は見てはならない悪夢
なのだろうか風船が風船であろうとする
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僭越さに主は罰を下されたのか?
ノルマンディーの師よ!――
人が人であるためには何が必要で
何が妨げるかあなたはよく知っていた
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されば,あなたの使命は描くことでは
なかったのか?ジュール叔父が天の栄光
に包まれる日をあなたはなぜ描かないのか?
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