詩を読む4/地獄のペチカ
来に対して出された確率は、現在になった瞬間に100%となる。かつての50%は起きた出来事に吸い取られ、姿を失ってしまう。
女はその100%となった出来事ではない出来事、吸い取られた50%の出来事を見ようとする。だから、偽装するのだ。すべてが100%となった出来事であるように。すべてが最初からそうなるべくそうなるように。
「おかあさん」にはなれないよ。女は一人きりの部屋で思う。テレビはバラエティを放映していた。男のタバコの匂いが残っている。その匂いこそが男そのものであるかのように思うが、そうではない。だが「おかあさん」と呼ばれる人たちは違う。それらの見えないものさえも男そのものだ、と言うに決まっている。
出来事とならなかった出来事を抱きしめられるほどの情熱はないな、と放映されるバラエティを見ながら思う。女は冷蔵庫の豚バラを取り出し炒める。ブーブーはジュージューだ、と考える。今おなかが空いている。これは偽装ではないな、と。
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