詩を読む4/地獄のペチカ
 
の奥、小さな階段を昇る。「良く」にむしゃぶりつく。

 「ねえ、あなたはどうしたいの?」と女は尋ねる。かつての「セイネン」はタバコに火を点けたばかりだった。その質問を自分に何度して来ただろう。有耶無耶にすることが出来ないほど、年をとったのかもしれない。男はたどたどしく、過去を語りだす。女はその口もとを見ている。戯言だ、と思うが女は何も言わない。多く語られる言葉が彼を浮遊状態から救おうとしていることを知っている。彼の根を張るべきところは、今のところ女の体一つであるという危うさも含め。女はそういう状態にも快楽を覚えているのだ。

 かつての「セイネン」はかつてを語りだす。重力に縛り付けられた、
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