詩を読む3/地獄のペチカ
 
ペースに向かった。ぬいぐるみが散乱するスペースで、妹は人形遊びをはじめていた。

 指差す言葉は何ものかと何ものかを区別する。名を与えることを命名と呼ぶのだから、指差す言葉は命を与えることに他ならないのかもしれない。マーベラスサンデー、サクラローレル、マヤノトップガン、この三頭が名を与えられなかったとしたら、あの歴史的な名レースは既に過去に葬られてしまっているだろう。どこか遠い場所に住む民族では、死んだ人の名が、すべての記憶から失われてしまった時、初めて死を意味するらしい。それらの死はゆっくりと、時間をかけて成熟される。
 この「おかあさん」は「アッキー」と「あっちゅ」を指差す。「あっちゅ」
[次のページ]
戻る   Point(1)