酔歌 - 1 / ****'04/小野 一縷
冷たく重い油膜が 舐めるように
横たわる裸の そこかしこを
ゆるゆると 圧迫してゆく
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細やかに泡立つ銀色の音像から 油色の真空の中
混沌とした精神の渦中へと 流れ出す音色は白金
現れる一つの音の波紋を 内側から
もう一つの音の波紋が 追い越して
振り向いて触れ合って 抱き合って融合する
寒波の怒号と吹雪の吠鳴がぶつかり
刺さり合い砕け合う衝撃波
午前二時四十三分
夜風が飛沫と飛散する
降りしきる酸の雪の中
遠吠えする野性の熱気が煙る
それは もう一つの孤独へ向けての
求愛行為としての 鋭利な叫び
倦み過ぎた寂莫という劣情
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