四次元の技/小川麻由美
 
粒立ったアコースティックギターの音色
少し鼻にかかった涙腺に刺さる歌声

陳腐な誉め言葉ならいくらでもあるだろう
そんな誉め言葉なんて弾く強さを秘めた
彼の奏でる音楽は荒野に存在するが
荒野とは異質で美的な何物かだ

癒しを求めるのはちぐはぐな行為だ
私は彼の心境など知るよしもない
彼の手を離れた音楽は一億人が聞けば
一億通りの解釈がある

嗚呼不覚にも彼の音楽の響きは
私の涙腺をぶすりと刺し
透明な血をとめどなく流れさせた
私の抱えきれないものたちを
どっさりと表に出しガタガタいわせた

根茎を伝わって来た得体の知れない音楽
地上に現れた芽は場合によっては危険だと思い知る
そんな体験を今夜の私は味わい
ティッシュの山を見て虚脱する
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