逃げる/阿ト理恵
 

逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう

池袋のラブホテルの裏口に汚れたビニル手袋がいくつもいくつも干してあったので汚れなかった手は森からおかえり海からおかえり炎からおかえりおかえりおかえりおかえりおかえりなさいませからキの窓口から気の樹のなかへにんげんもどうぶつもしょくぶつも影は
同じ黒なのですから
すべからく
すべからく
心音心寝心根真寝芯根信根真音、しん、ね
心拍数、ね、きにしなくっていいの
ぼくはあなたのやきかたしってます
メープルシロップかけてたほうがおいしいね

たとえば
いわゆる
これが
終わっちまったたましいを洗ったら縮んだので、なあんだ毛糸だったのね、羊だったのね
たましいわ
たのしいわ

地下鉄の階段を駆け降りて
にげるの
こげるの

地球のなかまで
おいかけてくれるかしら
あなた
わたし
ぼく
きみ
真摯服きてきてね
音のからだは早いのよ






(1997・8ユリイカ/1998・10阿ト理恵大全集掲載)




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