中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
私は王女の生きて居る世界の時間の流れと、私の生きて居る世界の流れが異なる事と、彼女がどれだけの歳月をかけて私を愛し続けているのか、という事に底知れぬ恐れを抱いて居た。同時に、永遠に対して激しい憎しみを抱いて居る事も理解した。すると、私は一瞬、誰を抱き締めて居るのか分からなくなってしまった。王女のダイヤのイヤリングが日溜まりの光を弾いている。此の巨城を囲む森の中から鳥の囀りが聞こえる。この時私は、一瞬、?永遠?を体感した様な気がした。私は三度瞼を瞑り、王女の形の整った唇に自分の唇を重ね合わせた。王女もまた、自分から唇への圧力を高めた。私は記憶を捨て、此処で生きて居る。そう深く思った。
あらゆ
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