中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
作に依って多くの言葉を語る。逆を言うと、詩作に依って多くの言葉を語るが為に、実生活で口数が少ないのかもしれない。そう言えば私は学生時代、寧ろ口数が多い方であった。
物事を人に伝える事は実に難しい。もしかしたら、どんなに素晴らしい文章を書けたとしても、私の今考えて居る物事の一%も伝わらないのかもしれない。限られたテーマや言葉の中で、読者に私の考える世界、そうあって欲しいと望む世界を全て伝える事は不可能である。
私は五月中旬のある土曜日に、王女の居る森の奥の、白亜の巨城へと出掛けた。正門を開けて中に入ると、木々の葉々に濾過された瑞々しい光が、無数の窓から射し込んでいて、炎の様に明るい日
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