中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
美貌は永遠だ。王女と知り合ってから丸六年が経つが、憧れていた先輩が亡くなってしまった、二十一歳の容姿に寸分とも違わない。王女は歳を取らないのだ。
「今日は?あの方?と此の森で逢った、最後の日です」
 私は瞼の上に不安な表情を浮かべてはいるが、王女に微笑んでそう告げた。
「そうですね」
 王女も少し寂しげな表情を浮かべながら、無理矢理微笑んだ。先輩は、六年前の翌日、睡眠薬自殺をしたのだ。遺書らしきものは、見つからなかった。
「貴女と同じ空間に居るだけで、心が和みます」
「私もです」
 私と王女は暫く見つめ合って居た。王女の澄み切った大きな瞳は美しく、私の心臓の鼓動を激しく打ち続けた。私
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