雑居房の英雄/……とある蛙
 
ないだろうかということで刑事がよく面倒をみている。もう一生のほとんどが娑婆と刑務所との行き来に費やされている。それで世間が注目するだろうか?爺は分かっている、誰も振り向いてもくれないことを!今更人を殺そうにも逆に痛い目に遭わされるのが落ちだから、大きな口を叩くだけなのだ。惨めを絵に描いたような生き方だ。でもそんな生き方をしているのは爺だけではあるまい。多かれ少なかれみんな雑居房の囚人だ。ここで惨めにならないコツは仲間内の英雄になることだ。嘘で固めた雑居房の英雄。爺はそんなことすらできないが。塀の内外で似たようなことをして皆生きている。みんな仲間内だけの英雄になって何とか生きていようだ。俺もそんな一人ではあるが。
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