中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
解できないことがあった。成功者の哲学には、受け入れられるものと受け入れられないものがあるということを悟った。それなら、僕が歌詞を付けてあげようか、と一瞬思ったが、何の実績のない素人の僕が、一流ミュージシャンの君の曲に歌詞など乗せられるはずがないと、特にアルバムの一番目の曲ならなおさら、全体のバランスを殺してしまうだろうと思い直し、僕は言葉を飲み込み、長い沈黙が流れ続けていた。
「…そんなことより、今日は一ヶ月に一度の討論会なんだし、さっそく始めるとしようか!!」
 君は無理に笑顔を作って、文芸誌を床に並べ始めた。その様子をぼんやりと眺めていた僕の右手に、プリント用紙の束がぶら下がっているのを見
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