降り立つ / ****'03/小野 一縷
 
黒い夜は翼で
濡れた街灯は滴 光る針先は行先
目蓋を濡らせば 感じれる

涙が鋭く凍るけど
唇が渇いて切れるけど
歯車は廻る ただ空転して
それでも 先へと空廻る いつもどおり 正確に 

血で化粧 目尻に 頬に おまじない
月の銀は 風穴
聴覚を ぴゅうう と 刺し回す 
抜け穴に 吸い込まれるのは 吹雪 
眼は閉じたまま 耳を すまして 手際よく
夢の密度を探る 夢の純度を研ぐ いつもどおり 的確に

心臓が難解な構造を持つ花弁のように 
複雑に熱く解けて溶け出す この胸の奥 深く

思い出すよ 熱く流れ込んでくる

きみが泣いた待合室の緑の光
きみ
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