詩を読む/地獄のペチカ
 
そこには距離はなかった。輪郭失われ、あらゆるものの隔たりは失われていた。

 「今日」が「キョウ」に変わると、「今日」は「京」でもあり、「凶」にでもなる。「キョウ」の隔たりは失われ、言葉の輪郭が消える。意味を失った言葉は重力から解き放たれ、透明度を増す。そう、「ゴウゴウ」となる風のように「キョウ」や「イジキタナク」などのカタカナ表記された意味は不可視の存在へと姿を変え、重力からにわかに解き放たれ、中空に浮き始める。姿を失った「セイネン」は、成年だったのか青年だったのか。いずれにせよ、「セイネン」には時間も距離も必要ではなくなる。「セイネン」は一つの音にぶつかる。「セイ」とは何か。重力から解き放
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