諧謔集/豊島ケイトウ
 

 〇悲しい、天竺まで赴いて買い求めた冷蔵庫が以前使っていたものとまったく同じだったときみたいに悲しい。

 〇頭の上にある見えない天蓋が少しずつ落ちてきていることについて知らぬふりをつづけるのはもうやめようと私はつい先だって天蓋によって頭を打ち砕かれた近い将来の私に叱られたばかりである。

 〇否応なしにすくすく伸びつづける私の陰毛よ、どうしてそこまで失われた十字架を目指そうとするのだ?

 〇眼前に鳥でいることにいささか辟易しながら今日も浅瀬に立つ白鷺がいるけれど私はすこぶる眠たい、私はすこぶる乏しい。

 〇私がかつて長期入院を余儀なくされた病院には仲のよい赤鬼と青鬼がいて
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