秋(2010年)/M&M
 
堅い肩が拒んで来たものは何だろう
刈り取られたばかりの田んぼは
まだ優しい黄色で
窓を開けると
稲の匂いが流れ込み
朝の光を浴びて 車は
電信柱が並ぶ田んぼの狭い舗道を
職場へと向かう
向こうから、夏の制服、水色のセイラー服を着た
女子学生が自転車に乗って走ってくる
空はまだうっすらと白く
地表は朝の生気を宿し
流れ込む少し冷たい空気が
鼻孔を通り胸に入るたびに
私の身体は少しづつ溶け
窓から出てゆく

田んぼを通り過ぎ表通りに出て
窓を閉める
秋、昔、私は駅にいた
濃紺の夜の空が頭上にあり
視界の左に駅がぼんやりと浮かんでいた
吐き出される人波を私は見
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