反映/豊島ケイトウ
魚の小骨のように胸腔にナイフが引っかかっております。
子どもの時分からずっと引っかかっているのです。
(おかしいですか?
たいして悩みでもないのですが、
やみつきだなんてとんでもない。
その反面、狼藉を働く月明かりによく輝くのです)
我が家は大変見晴らしのよい高台にありました。
分限者とまではいえませんでしたが女中がおりましたし、一日亀やらセカイ系イグアナやら精霊鰐やら高級蛇やらを飼ってもいました。
長屋は学生のための住み込み部屋となっており、最短では三日、最長では四年間、実にいろいろな若者がやってきましたが、ワタクシの記憶に正しく残っている者は一人――ナイフを舐
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