銀杏の葉 /服部 剛
バスタオルで身を包み
ソファに肩を並べ
日中、納骨式で使った
母の写真を
君は僕に、初めて見せた。
実家の庭から、笑って振り返り
今にも歩き出しそうに
こちらをそうっと見守りながら
少し開いた唇は
( りえこ・・・そろそろいくわよ )と、僕等に言った。
3月17日・午前3時30分
1年前の君は、弟妹(きょうだい)と共に
静かに息を引き取る、母の最期を見守った。
1年後の同じ時刻に
君は僕と同じ布団に入り
瞳を閉じて、夢を見る・・・
遥かな国へと去りゆく母が
僕の手に
1通の手紙を
バトンのように、手渡すのを
その空白の便箋には
2枚でひとつの葉になった
銀杏の絵が
薄っすら、浮かび上がっていた。
戻る 編 削 Point(3)