失踪日和/
亜樹
失速していく雲を見ながら、
今日は失踪日和だな、と呟く。
プラスチックのストローの端を囓ると
孤独の味がした。
久し振りに読む小説の
栞の紐が色褪せた橙で
苛立たしいような
物寂しいような。
しっそう、と
声に出さずにつぶやいてみる。
唇は
嫉妬、の形に動く。
雲が失速する。
失踪日和である。
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