炎のひと /服部 剛
 
今日はいつになく忙しい日で 
不器用な自分にもくたびれ果て 
痩せた野良犬の姿になって 
帰りの夜道をふらついていたが 

「おはよう」と「おやすみ」の 
メールを毎日のように交わす 
君の笑顔は暖炉のようで 

夜の淵で膝を落とし 
くべる火に頬を照らされながら、僕は呟く。 

(もう一度、明日へと燃える炎のひとになろう・・・) 

今、バスは冬の終わりの 
雨が滲むアスファルトを 
まっすぐ僕の家の方角へ走っている 

今晩もきっとメールボックスに届いている 
君の笑った顔文字に 
吸い込まれるように、バスは走る。 
冷たい雨の夜道に、水飛沫(みずしぶき)を上げながら。 







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