歓びの花 /服部 剛
仕事帰りの道で雨に降られ
ずぶ濡れで家に帰ると
台所に立つ初老の母はふりかえり
「 谷川先生のご紹介で
原稿依頼の電話があったわよ 」
と、不思議そうに言った。
最近職場で目標を見失い
うつむいていた僕の胸に
ぱっ と小さい花が、咲いた。
その夜僕は
世界の誰にも見せない
顔文字の微笑みと
言葉の花束を、メールの文末に添えて
携帯電話の画面越しにいる
世界で最も大切な女(ひと)の住む街へ
(雨模様の夜空を貫く矢のように・・・)
歓びの送信ボタンを、押した。
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