夢散 / ****'04/小野 一縷
落ちる 硬いエコーの笑み
森に降る霧雨は 夜針 繊細な刺激
大木の穴を覆う 羊歯の上に佇む みなしご
盗んだ真鍮の懐中時計 もう動かない
静寂から生えてくる 不安の芽
麻の苦い香り まだ未熟な 希望の扱い方
老人は我慢できず 沈黙の中 枯れ落ちる
酔狂な若者たちは 夜中みな 踊り狂う
静寂から浮き上がる 捨て犬の小言
見世物小屋から逃げた 小人のでっちあげ
六才になると 子供は皆 背中に六茫星を 彫られる
艶のない蝋細工の聖母 砒素が染み込んだ聖書
大小 強弱 高低
意味も 価値も 何も 無い 音が
目眩の中 木枯らしになって 渦を巻く
その螺旋 軌跡を 言葉に してしまうと
こうして実に くだらない 詩に成り下がる
化学的筋書きの 夢 幻は 風前に昇る 虹色の煙
ただ その 喫味を
ただ 無垢に 愉しみながら 今宵を過ごす
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