バックミラーに映る景色/仁惰国堕絵師
 
けれど、また車を拾おう。
そしてうちへ帰ろう、もう少し生きてみよう。

しかしこんなところでタクシーが拾えるわけもない。
途方もなく遠くにあるだろう大通りまで歩こうと思って足を運んだその時、2つの灯りがこちらへ近づいてくる。

・・・・ここまで運んでくれた、あの運転手さんの車だ。
私には、運転手さんが私の顔を見て少し安堵したように思えた。

運転手さんへ言うべき言葉を探したが、なんといえばいいか言葉が見つからない。
そんな私に運転手さんはにっこり笑って、私にこう言った。

”お客さんが手を上げてるのが、バックミラーに見えたものでね”
”いらっしゃいませ!”
戻る   Point(0)