演劇の有用性について/salco
て響き合っているという錯覚にとらわれることがある。パヴロフの躾にがんじがらめの飼い犬がサイレンに遠吠えするように、
ふと共鳴器官のスイッチが入るみたいな瞬間がある。尤も、先史時代の毛深いA子さんも同じような日常の些事に溜息をついていたのは想像に難くなく、
当然と言えば当然なのだが。
とすれば、こうして演劇の企まれた虚構、その嘘が懐から出してみせる真実らしきものが、宗教がせちがらい自爆テロの具足にまで零落した今世紀も、
科学と肩を並べ続け得るのだと、門外漢の私にも結論できるようだ。
すると人間はやはり、法身仏の三密や神の秘蹟に仮託するのではなく、人間自身の掌によってわずらう額を治癒されたい
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