理科室/わたし/桐谷隼斗
「あのね、
から物語は始まり、
彼女は電話をきったのです。
金木犀の香りの詰まった壜に、あなたの名前を書いてる、
「か・こ」
シャーレに
なつかしい-あなた
あたらしい-わたし
を
置いて、
窓から嘘を吸い込む/吐き出す
また、生きるのだ、
不覚にも振り向いてしまった。
青空の下で脈打つわたしたちの血は、
あきらめない
と決めた日から真っ赤に呼吸している。
半-透明のセロファン紙を引きちぎって春、
わたしはわたしを飾る形容詞を、
凝視する、
ため息のなかに真実が香る。
嘘を剥がす、ピンセットでつまんだ血が弾け肉がほころぶ。
誰も
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