浅草物語 /服部 剛
 
幸(さいわい)を、一心に願った。 


  * 


ちらほらと雪のぱらつく、浅草で。 
紺のハッピを身に纏(まと)い
元気に客寄せをする、人力車夫を横切って 
地下鉄の階段に潜れば 

車内には、若い旦那が 
両腕の揺りかごで
泣いてる赤子を抱っこしていた。 

稲荷町を過ぎる頃には 
手のひらに残る
たった一つのあげまんが 
悴(かじか)む肌に、暖かかった。 







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