浅草物語 /
服部 剛
幸(さいわい)を、一心に願った。
*
ちらほらと雪のぱらつく、浅草で。
紺のハッピを身に纏(まと)い
元気に客寄せをする、人力車夫を横切って
地下鉄の階段に潜れば
車内には、若い旦那が
両腕の揺りかごで
泣いてる赤子を抱っこしていた。
稲荷町を過ぎる頃には
手のひらに残る
たった一つのあげまんが
悴(かじか)む肌に、暖かかった。
戻る
編
削
Point
(2)