全裸の老婆/ハイドパーク
 
全裸の老婆が
鈍器を振り上げ
自らのあばらめがけ
グシャッと打ち下ろした
腐った板の胸は破け
闇夜の口からは
アスベストの霧が出た

胸の割れた老婆は
次に右膝を潰し
その次に左膝を潰した
達磨落しのように崩れ
正座になった反動で
前のめりになると
軽石の頭が取れてしまった

薄毛が白い老婆の頭
バリアフリーの緩やかな坂を
ストロボ撮影のように
残影を残しながら
転がり落ちていった

やがて
ボウフラの湧く
ちいさな水たまりに堕ち
相応のしぶきを上げ
瞼を閉じないまま
クルクルまわっていた

長く生きて死ぬとは
こういう事かも知れない

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