赦されるの蚊、この殺戮は。/石川敬大
 



 親分が死んだ
 翌日は
 空がどんよりしずみこんでいて
 さかんに落ちる公園の黄葉たちをみていた
 車内の
 十月


 か。


 なやまされていた
 か。
 この身ひとつは
 毒素を注入する
 針を拒んで
 あかく腫れあがる
 ぼくの素肌はレジスタンスをする
 戦闘をする
 モーレツな痒み
 その地点に
 攻防の痕跡があった
 それを戦跡とも言う


 か。


 まさか
 親分の
 うまれかわりではあるまい


 ぼくは殺戮をした。


 本の裏表紙
 その白、その余白
 の、壁面に
 ベットリ付着した血痕がきれいに拭いきれない

     *

 やられてばかりじゃいられなかった
 戦後も
 とおくなったものだ





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